七味唐辛子と一味唐辛子の違い
目次
七味唐辛子と一味唐辛子の違い
世界中にある唐辛子を用いた辛味調味料の中でも、とりわけ日本人にとって馴染み深いのが七味と一味。普段食卓で何気なくお使いかと思いますが、そもそも七味と一味は何がどう違うのかご存知ですか?
どちらも共通しているのは、乾燥させた唐辛子の実を粉末にした辛味調味料であること。
一味の原材料は赤一色の見た目が表すとおり、唐辛子オンリーです。
それに対して七味は唐辛子をベースに、山椒や麻(あさ)の実、胡麻など数種類の素材がブレンドされています。
七味と一味の違いが分かれば、使い分けは簡単です。唐辛子だけで作った一味は辛さに特化していますので、カレーや麻婆豆腐、餃子、ピザなど、辛味足しできるお料理は和洋中を問いません。うどんや味噌汁、煮炊き物といった和のおかずには、辛さだけでなく豊かな風味をお料理にもたらし、美味しさをアップさせる七味がおススメです。
辛味足しは一味、風味付けは七味と覚えてください。
辛さを比べるなら当然、七味より辛いのは一味になります。だけど実は、唐辛子の品種などによっても七味と一味の辛さに違いが出るんです。代表的な唐辛子は、鷹の爪という別名でもおなじみの本鷹唐辛子。クセのない上品な辛味に加えて、唐辛子本来の旨みが味わえる本鷹唐辛子は、焙煎すると香ばしい風味が生まれ、やわらかい辛味になるのも特長です。
「おちゃのこさいさい」では中辛の位置付けで『京の赤七味・一味』の原材料にしており、低温でじっくり焙煎した本鷹唐辛子は小辛の『京の黒七味・一味』に使用しています。
七味唐辛子とよく間違えられるチリパウダーとの違いについて
七味と一味の違い・唐辛子による辛さの違いがハッキリしたところで、七味とチリパウダー※1の違いについてもご紹介します。
チリパウダーも唐辛子ベースの調味料という点は七味と同じですが、合わせる素材が全く異なるので洋風の七味ではありません。チリパウダーにはニンニクやクミン、オレガノ、パプリカなど、七味には用いないスパイス・ハーブがブレンドされています。
成分についての詳細
七味と一味に使用している唐辛子をはじめとした素材には、一体どんな成分が含まれているのでしょうか。まずは唐辛子について解説します。
唐辛子の辛さを生み出しているのは、カプサイシン※2という成分。よく唐辛子は種が辛いようにイメージされますが、それはカプサイシンを含んでいる白いワタの部分に種が付いているから。カプサイシンは唐辛子の実が熟すことでどんどんワタに蓄積されるため、青い唐辛子よりも赤や黄に色付いてから収穫する唐辛子のほうが辛いというワケです。また、乾燥させた唐辛子には、抗酸化作用を持つβカロテンとビタミンEがたっぷり。100gあたり、生の唐辛子よりもβカロテンは2倍以上あり、ビタミンEも3倍以上含まれているそうです。
「おちゃのこさいさい」ではお好みの辛さによっても七味と一味が選べるよう、中辛・小辛(焙煎時)の本鷹唐辛子、大辛の黄金唐辛子、狂辛のハバネロと3種類の唐辛子を使い分けています。唐辛子と同じく七味にブレンドしている格別風味の素材も、色味や口当たりにまでこだわって厳選したものばかり。次は素材ごとの成分を見てみましょう。
京七味に欠かせない山椒は、シビれるような辛さと爽やかな香りが独特とあって、珍しい成分を含んでいます。唐辛子のヒリつく辛味成分がカプサイシンなら、山椒のピリリとした辛さはサンショオールという成分によるもの。柑橘系の清々しい香りは、精油の成分でもあるシトロネラールによって生み出されています。
柚子は何を隠そう、果汁よりも果皮にビタミンCが豊富。果皮100gあたりのビタミンC含有量は、レモン果汁の3倍以上を誇ります。また、白いワタやスジには血流・冷えの改善が期待できるという、ポリフェノールの一種であるヘスペリジンが含まれています。
胡麻は昔から食べる丸薬といわれるほど、ひと粒にビタミンやミネラルといった栄養がぎっしり。中でもセサミンという成分は、胡麻ひと粒に約1%しか含まれていないものの、肝機能を高めたり、コレステロール値を下げたりなどの健康効果が期待できるとあって有名です。
温州みかんの果皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)は、漢方薬となる生薬の一種です。リモネン、テルピネンという名の香り成分は、アロマテラピーに利用される精油の成分として知られています。また、柚子の果皮と同じようにヘスペリジンを含んでいるのも魅力です。
青海苔も健康と美容にいい成分の宝庫。カリウムやカルシウム、マグネシウムのほかに食物繊維も豊富なので、ダイエットの手助けになるともいわれています。紫蘇もまた、知る人ぞ知る栄養満点の素材です。紫蘇はβカロテンを含んでいることから緑黄色野菜に分類されていて、ペリルアルデヒドやロスマリン酸など、ポリフェノールの一種である成分も注目されています。
芥子(けし)の実は七味以外に、あんぱんのトッピングでもおなじみ。胡麻と同様にひと粒が小さくても、オレイン酸やビタミンB群、食物繊維、カルシウムといった豊富な栄養成分を含んでいます。
最後にご紹介する麻(あさ)の実は、海外でも話題のスーパーフード。少量で必須脂肪酸やミネラルなどがバランス良く摂れることから、栄養食品として人気です。
効果についての詳細
お料理を美味しく味わう風味付けや辛味足しのほかに、七味と一味にはどんなメリットがあるのでしょう。ひとつは、減塩効果です。健康に気遣った塩分控えめのお料理に振りかければ、辛味や風味によって塩味の物足りなさが解消されます。また、京料理のような薄味のお料理に振りかけると、素材そのものの味わいや繊細なおだしの旨みを引き立ててくれます。
そして、最大のメリットは何といっても、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンが手軽に摂取できること。農林水産省のカプサイシンに関する詳細情報ページでは、カプサイシンの生理作用※3についてこんな記述があります。
消化管から吸収され血中に入ると、感覚神経から中枢神経系を介して、副腎からのアドレナリン分泌を促進します。このアドレナリンが、脂肪代謝などエネルギー代謝を促進したり、発汗を促したりします。
要は、ダイエットの手助けとなる効能が見込めるということなんです。
私たちの身体には、2種類の脂肪細胞が存在します。一つは、体内のエネルギーを脂肪として蓄える白色脂肪細胞。もう一つは、脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞です。中年太りや年々痩せにくい体質になる要因は、加齢に伴って褐色脂肪細胞が減少していき、代謝が落ちるからだといわれています。この褐色脂肪細胞を活性化して、増加させる有効成分こそ、カプサイシン。
同じく、農林水産省のカプサイシンに関する情報ページによると、
(カプサイシンは)気体になりにくいため、トウガラシを砕いて粉にしても辛さが減ることはありません。また、カプサイシンは加熱しても壊れにくいので、調理した後も辛みをもたらします。
とありますので、乾燥させた唐辛子の実を粉末にした七味と一味なら、いつでも気軽に日常のシーンで辛味成分のカプサイシンが摂取できます。また、農林水産省が発信するカプサイシンの生理作用には、七味と一味がカプサイシンの摂取に適していると受け取れるような記述も。
カプサイシンを摂取すると、感覚神経を介して胃酸の分泌が抑制されます。動物試験では、少量のカプサイシンの摂取によって、胃粘膜を保護する作用が働いて胃潰瘍が発生しにくくなることが知られています。一方、大量のカプサイシンの摂取によって、感覚神経のTRPV1が機能不全を起こすと、胃粘膜の保護作用がなくなるとの報告があります。
好みの辛さが調節できる七味と一味を使えば、身体に丁度いい適量のカプサイシンが摂れますので、ダイエットなどを目的とした健康的な食生活が無理なく続けられるはずです。
七味唐辛子、一味唐辛子あなたはどっち派!?
皆さまは普段、七味と一味のどちらを好んでお使いですか?中には、昔から食卓にあったという理由で、自然とどちらかの味に慣れ親しんでいる人も多いのでは。
江戸時代に東京の薬研堀で生まれた七味は、関東では辛味を際立たせるブレンドです。一方、京都の清水寺門前から広まった関西では、風味にこだわったブレンドが好まれています。これは七味が各地へ伝わった当時、関東では蕎麦、関西ではうどんが庶民の味であったことから、食文化の違いによって好みが分かれたと考えられます。そうなると、蕎麦つゆのような濃い味に合う唐辛子の辛さが好まれてきた関東では、七味よりも一味が人気なのでしょうか?
地域別に七味と一味の売り上げを調べてみたところ、意外にも一味は関東ではなく北海道と九州、七味は首都圏と関東外郭が高いように見えました。寒さ厳しい北海道では、唐辛子で身体を温めるために。それとは逆に、夏場を中心に気温が高い九州では、汗をかいて不足した塩分や消耗した体力を糖分で補うため、甘辛い味付けが好まれています。濃い味のお料理には唐辛子だけを原材料に作る、辛さのハッキリとした一味が合いますよね。
同じく、関東も九州のように濃い味が定着しているものの、東京の薬研堀が七味の発祥地であることから、一味よりも七味が京浜地区に馴染み深いようです。そのほか、京都や大阪など、だしの文化が根付いた近畿。讃岐うどんの聖地・香川があり、海の幸豊富な四国。海の幸も豊富で、多彩なお鍋と汁物が伝わる雪国・東北。これらの地域では七味・一味とも、ほぼ売り上げに差がないよう見えました。これは、特に近畿・四国・東北は食文化が独特だったり、新旧のご当地グルメがいくつもあることから、お料理によって自然と七味・一味が使い分けられてきた結果なのかもしれません。
かけるならうどん派?、蕎麦派?
七味と一味は、日本人が大好きな麺類にぴったりの辛味調味料です。とりわけ、日本の食を代表するうどんと蕎麦の薬味には欠かせません。あなたもうどんや蕎麦を食べる際には、家でも外でも無意識に七味か一味を選んで振りかけていませんか。
普段からお料理によって七味と一味を使い分けている人は、うどんには風味付けの七味、蕎麦には辛味足しの一味をお使いでは?確かに、おだしの旨みと香りを愉しむ関西風のうどんには七味、醤油の香りとコクを活かした関東風の蕎麦つゆには一味が合います。だけど、うどんと蕎麦には温かいものや冷たいものなど、味わい様々なメニューがありますよね。カレーうどんには一味、天ざる蕎麦には七味など、メニューによって七味と一味をさらに使い分ければ、いつものうどんや蕎麦が一段と美味しく味わえます。
おススメの組み合わせはこちらです。
好みの辛さや風味が選べる「おちゃのこさいさい」の七味と一味で、ぜひ試してみてください。
●かけ(素)うどん、きつねうどん、肉うどん
繊細なおだしで味わう京風のシンプルなうどんはもちろん、甘辛く味付けした油揚げや肉を浮かべたうどんには、風味豊かな七味が◎です。
●カレーうどん、鍋焼きうどん、ぶっかけうどん
一味の辛さはスパイシーなカレーだしや熱々のだしにも負けません。蕎麦つゆ風の醤油香る濃いつゆで味わううどんにも一味が◎です。
●かけ蕎麦、天ざるそば、鴨南蛮
うどんのようにおだしごと味わったり、天ぷらと一緒に愉しんだり、鴨肉と白ねぎの甘い旨みが味わい深い和食感のある蕎麦には、七味の風味が◎です。
●ざる(もり)蕎麦、たぬき蕎麦、おろし蕎麦
蕎麦つゆと同じく、温かい蕎麦だしも醤油が味の決め手なので一味が◎です。おろし蕎麦も一味の辛さで蕎麦の甘みや香りが引き立ちます。
選び方
お料理によって使い分けたり、一つのお料理で味変も愉しめる七味と一味。それだけでなく、好みの辛さや風味が選べるのも、七味と一味の魅力なんです。
選び方のポイントは、七味と一味のメイン原材料である唐辛子の品種。原産地の中南米をはじめ、世界各地で栽培されている唐辛子の品種は数百、数千ともいわれています。「おちゃのこさいさい」では契約農家さんが栽培する国産の唐辛子にこだわり、主に2種類の赤唐辛子と黄色い唐辛子を七味と一味の原材料に使用しています。
●ハバネロ
北米を主産地に近年は日本でも栽培されている、激辛を上回る狂辛の赤唐辛子。後引く辛さの奥から唐辛子本来の旨みが溢れ、柑橘系のフルーティな香りまで愉しめます。
●本鷹唐辛子
鷹の爪と呼ばれる、日本でおなじみの赤唐辛子です。クセのない辛さと上品な旨みが特長で、焙煎すると香ばしさが出て辛さも和らぎ、黒胡椒のような風味になります。
●黄金唐辛子
熟すと緑色から鮮やかな黄金色になる、観賞用の唐辛子としても人気の激辛品種。キレのある辛さで、パプリカに似た風味が香り高く、さっぱりとした口当たりです。
七味の場合は辛さと共に、風味にもこだわった選び方が愉しめます。山椒がピリリと香る京七味ブレンドや柚子たっぷりの爽やかブレンドなどから、好みの風味を見つけてみてください。
代用
スパイシーな中華などに欠かせない調味料がない時や、お料理に赤い彩りと辛味を付ける薬味がない時。ピンチヒッターとしてキッチンにあると便利なのが、七味と一味です。アヒージョの鷹の爪代わりに一味といった、具体的な代用例をいくつかご紹介します。
●中華の香辛料代わりに七味
特に麻婆豆腐をはじめとしたシビ辛の四川料理に、山椒入りの七味は使い勝手抜群。エビチリの豆板醤がない時も、味噌に七味を混ぜ合わせて代用できます。
●挽き肉料理のチリパウダー代わりに七味
タコライスのタコミートやチリコンカンなどの挽き肉料理に山椒たっぷりの七味を使えば、肉の臭み消しになり、脂っこさも抑えられます。
●パスタの唐辛子代わりに一味
シンプルなペペロンチーノやボンゴレビアンコはもちろん、ボンゴレロッソやアラビアータなどのトマトソースに使う赤唐辛子は、一味が代用できます。
●和食の唐辛子代わりに一味
紅葉おろしは大根おろしに混ぜるだけ。赤唐辛子の輪切りでピリ辛に仕上げるきんぴらごぼうや千枚漬けも、一味を使えばもっと簡単に辛味が付けられます。
ほかにも、酢+塩+一味でタバスコ風、オリーブオイル+ニンニク+塩+七味でハリッサ風など、七味と一味があれば様々な辛味調味料を手作りできます。一度の食事で使い切る量だけ手作りできますから、唐辛子の辛さや山椒などの香りがフレッシュに仕上がりますよ。
投稿日:2022年07月13日
更新日:2022年9月22日